【書評】『バカの壁』の内容まとめ・感想!「わかったつもり」の落とし穴とは?

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養老孟司さんの『バカの壁』という本を読んだので、感想をまとめたいと思います。

この本は、2003年に出版されて、400万部超えのベストセラーになりました。
流行語大賞にもノミネートされたりと、話題を読んだ本です。
作者の養老孟司さんは解剖学を専門とする医学の教授で、東京大学の名誉教授でもあられる方です。

この本の中で筆者は「結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できないんだ」と主張しています。

脳科学などの医学の知識をベースにしながら、今の(とはいっても書かれたのはちょっと前ですが)社会のおかしさがどうして起きているのか、それを考察している1冊です。

バカの壁(新潮新書)

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養老孟司
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ぼくが『バカの壁』を読んだきっかけ

ぼくの家では父もよく本を読んでいます。

実家には本棚がいくつかあるのですが、どれも難しいものばかり。
幼い頃に本棚を見ても、タイトルの意味なんてどれもわかりませんでした。

そんな中で、一冊だけ読めたタイトルがありました。
「バカの壁」
小学生でも読める字で書かれた本のタイトルは僕の頭の中にずっとありました。

10年ほど立ってから、ぼくは書店で一冊の本を買います。
それは『バカの壁』著者の養老孟司さんの『自分の壁』という本です。

ここには「若者の自分探しなんて意味ないぜ!」という内容が書かれていたのですが、その話はまた別の記事にて。

『自分の壁』も十分に面白かったので、せっかくなら『バカの壁』も読んでみようか、そうして読んでみることにしました。

『バカの壁』の内容・要約

『バカの壁』の内容は最初に説明したとおり、「脳科学などの医学の視点を取り入れた今の人間社会への問題提起」です。

さっくりとかいつまんでいきますね。

  • 「わかっている」と思っていても前提がずれていたりすることがある。
    「わかる」ということは難しい。科学だって「推論」であって真理ではない。
  • 人間の脳をシステムとして考えると、同じ入力に対する反応は人によって異なる。
  • 「個性を伸ばせ」という言葉の奥には「多くの人が納得できる「共通理解」と独自である「個性」の2つが求められている
  • 人間というものは変化する。逆に情報は変化しない。それが今はあべこべに捉えられてしまっている。人なんて変わるのだから、個性的であるよりも相手の気持ちがわかる方が大事だ。
  • 最近の人は頭の中で考えすぎて、身体のことをあまり考えなくなった。本来学ぶとは、頭と身体での行動がセットなのではないか。
    社会において身体とは「共同体」の問題となる。大きな共同体としての機能がなくなって、全体としての常識がなくなってしまった。
  • 食うに困らなくなった現代人にとっての次の問題は「環境問題」ではないか。
  • 人生の意味なんて、周囲や社会とのつながりの中でしかない。
  • 右脳と左脳の機能が違うのだから、矛盾で悩むのは当たり前。
  • 食うに困らなくなったホームレスの出現が失業率の低下、と悲しまれるというあべこべ状態になっている。
  • 利口かバカかを決めるのは結局社会的順応性でしかない。
  • 教育者の質も低下している。
    もっとあたりさわりのある先生、「俺を見習え」くらいの先生でもよい。
  • 豊かになった社会においてはこれから何をどう配分するかが大事になるのではないか。
  • 考えるのは大変なこと。何かを盲信するのは楽。
  • どこかのコミュニティ内で通じるものではなくて、宗教や違いを超えて「人間であればこうだよね」という普遍的な常識を考えるときではないか

だいたいこんなことが書かれています。

『バカの壁』を読んだ感想

この本は「わかったようでわからない」そんな本だと思いました。

文章が短く、テンポが良いですし、具体的な例えを使っているのでサクサク読みすすめることが出来ます。
ただ、いろいろなところに話が飛んだり、例が多い分、本筋が何か時々わからなくなってしまうということもありました。

その中で僕が一番印象的だったのは2点です。
1つは、豊かな現代社会のあべこべについて。
そしてもう1つは、個性なんてないんだということについてです。

この本の中で、ホームレスの話が紹介されています。
昔の日本は「働かなくても食える社会」を理想としていました。
そして今成長した日本においてはホームレスの数が増加しています。
つまり「働かなくても食える社会」が実現したのです。
するとどうでしょう、今度は失業率が増加したことに怒る日本社会。

豊かになった日本で、いろいろな「あべこべ」状態が起きているという話です。

最近、僕自身も「豊かな社会」について考えることが多いです。
豊かな社会について考えるきっかけになったのはもともと僕の性格によるものがあります。

コンピュータをずっと触っていたのですが、その無機質性に対する疑問がありました。
ドラえもんのような、人間的な温かみがあるコンピュータは実現できないのだろうか。
そんなことをむかしからもやもやと考えていて、大学で情報工学を先行することにしました。

そして入った計算機の世界では、「どう効率的に処理をするか」といった速さ、効率性、便利さのような議論がよくされています。

そんなとき、考えました。
コンピュータが進歩すればより便利で効率的な生活が行われる。
けれど、その先に人間の幸せはあるのだろうか?と。

それをきっかけとして最近は資本主義についてだったり、今の社会の中で「豊かさ」や「QoL」を考えています。
なので、この現象については僕も興味深く読みました。
ちなみにそれを解決する手段として、ワークシェアリングなどのいろいろなものの配分のしなおしという言葉が書かれていて、最近の「シェアリングエコノミー」のさきがけ的な発想だったなと思っています。

もう1つは、個性なんてないという話です。
日本では、高校まで同じように育てられています。
しかし、産業が成熟し、技術が進歩した今の社会ではそういった人材の需要は減少しています。
ここに教育と産業のギャップがあり、みんな同じように育てられるのに、いきなり個性を求められるという現象が発生しています。

僕のまわりにも、「自分の個性」って何だろうということで悩んでしまう大学生はわりと多いです。
そんな「個性」問題に対する養老先生の回答は簡単で、「個性なんてないんだ」というものでした。

人間変わるのだから、そんな個性を見つけたところですぐに変わる。
という主張です。

確かに納得もします。
このように、「個性があるべき!」のような一元論、絶対的な考え方をもうやめようよ、そんなことが書かれていた本でした。

『バカの壁」を読んだあなたにおすすめ

さて、最後に関連図書をまとめておきます。

まずは、『ファスト・スロー』という本です。
「わかったつもり」は難しいという話がありましたが、人間は偏見なしに正しくものを見るのが難しいということを解説してる本です。

もう1冊は、『99.9%が仮説』です。
科学は真理ではない。ということをより詳細に買いてある本です。

99・9%は仮説~思いこみで判断しないための考え方~ (光文社新書)

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