『理科系の作文技術』を読んで変わった3つのこと——大学生が実践した文章術
大学生活ではレポートや論文を書く機会がたくさんあります。社会人になっても報告書やメールなど、文章を書かない日はほとんどありません。
でも「文章の書き方」って、意外と誰にも教わらないものです。自分も大学時代、レポートを書くたびに「これで伝わるのか?」と不安を感じていました。そんなときに手に取ったのが『理科系の作文技術』です。
タイトルには「理科系の」とありますが、内容は論理的な文章を書くための技術が体系的にまとまっています。理系・文系を問わず、「正確に伝わる文章を書きたい人」全員に役立つ1冊です。
『理科系の作文技術』とは
著者の木下是雄さんは、東京大学卒で学習院大学学長も務めた物理学者です。海外の大学では「文章の書き方」の授業や教科書があるのに、日本にはそれがない。そんな問題意識からこの本を執筆されました。
1981年の発売以来、累計100万部を突破するベストセラーです。
この本が繰り返し伝えているメッセージは、シンプルに2つです。
- 「簡潔」かつ「正確」な文章を書くこと
- 事実と意見を分けること
たったこれだけですが、実際に意識して書いてみると文章の質がかなり変わります。
章ごとの要約と使えるポイント
各章の内容を要約しつつ、実際に使えるポイントを整理します。
序章 — 文章には2種類ある
文章には「自分が読むもの(日記など)」と「他人が読むもの(レポート、報告書など)」の2種類があります。自分が読む文章は自由に書いてよいですが、他人が読む文章には守るべきルールがあります。
ルールの核心は「読み手が、自分の伝えたいことを短時間で理解できること」。そのために必要なのが、事実と意見の分離と、簡潔な表現です。
準備作業(立案) — 書く前に「目的」を決める
文章を書き始める前にやるべきことがあります。その文章の役割・目的を明らかにすることです。
この本では、文章の冒頭に「この文章は〜のために書かれたものである」と目的を1行で書いてしまうことが推奨されています。たとえばこの記事なら「この文章は、『理科系の作文技術』に興味を持っている読者に対して、内容とよさをわかりやすく伝えるものである」となります。
目的を先に決めると、「何を書くか」「何を書かないか」の判断基準ができます。自分もブログを書くとき、書き始める前に「この記事は誰のどんな問いに答えるのか?」を考えるようにしていますが、この習慣の原点はこの本にあったと思います。
もうひとつのアドバイスは、「自分が『なま』で得た情報を素材にする」ということ。実体験をベースにすると文章にオリジナリティが生まれます。
文章の組み立て — 構成のパターンを知る
文章の基本的な構成パターンは2つあります。
- 起承転結: 日本語の文章の伝統的な構成
- 序論・本論・結論: 最初に結論を述べてから論を進める構成
レポートや論文では後者が基本です。読み手はまず「この文章を読むべきかどうか」を判断したいので、序論で結論と全体像を示してあげることが大切です。
注意点として、結論までしっかり書ききること。「尻切れトンボ」にならないように最後まで書くことが強調されています。
パラグラフ — 文章の「段落」の作り方
長い文章を読みやすくするには、パラグラフ(段落)に区切ることが有効です。
ポイントは、各パラグラフにトピックセンテンスを置くことです。トピックセンテンスとは、その段落で最も伝えたい一文のこと。通常は段落の先頭に置きます。
トピックセンテンスだけを拾い読みしたときに文章全体の要旨がわかる。そういう構造が理想です。
レポートを書くときにこの「1段落1トピック」を意識するだけで、読みやすさが大きく変わります。自分の場合、大学のレポートでこの手法を取り入れてから「論理の流れがわかりやすい」と言われることが増えた記憶があります。
文の構造と文章の流れ
- 文章は論理構造上「幹」を中心に「枝」に進むのが望ましい
- 日本語は修飾語が前に来る構造のため、枝から幹に向かいがち
- 頭から読んで1本の筋として理解できる構成を目指す
要するに、一文を読んだときに「何の話をしているのか」がすぐわかることが大事です。
はっきり言い切る姿勢
書くからには、自分の主張や考えを明言すべきです。「〜かもしれない」「〜と思われる」のような曖昧な表現を安易に使わない。
もちろん断定できない場面もありますが、根拠があるなら言い切る。この姿勢が文章に説得力を持たせます。
事実と意見 — この本の最重要ポイント
この本で最も繰り返し強調されるのが、事実と意見を明確に分けることです。
たとえば「猫は動物である」は事実。「自分は猫をかわいい動物だと思う」は意見です。この2つを混ぜて書くと、読み手は「これは客観的な情報なのか、著者の主観なのか」が判断できなくなります。
事実を示すときはデータや引用で裏付ける。意見を述べるときは「〜と考える」「〜と思う」のように主語や動詞で明示する。
ブログを書いていても、この区別を意識するかどうかで文章の信頼度が変わります。たとえば本の要約パートでは「本にこう書いてある」という事実を書き、感想パートでは「自分はこう感じた」という意見を書く。この記事自体がまさにその構造です。
わかりやすく簡潔な表現
- 一文は短くし、誤解のない表現を使う
- 主語と述語の対応を正しく保つ
- 修飾語は被修飾語の近くに置く
- 漢字とひらがなの割合にも気を配る
「伝わらない文章」の多くは、一文が長すぎるか、主語と述語がねじれていることが原因です。
執筆メモ
- 原稿用紙の正しい使い方
- 辞書を手元に置いて言葉遣いを確認する
- 単位系や引用、図の使い方を正確にする
デジタルで書く現代でも、「辞書で確認する習慣」は重要です。
手紙・説明書・原著論文
- 手紙には必要な情報をもれなく載せる
- 説明書はユーザーの行動を想像しながら書く
- 原著論文は情報を整理してから書き始める
どの文章にも共通するのは「読み手の立場で考える」ということです。
学会講演の要領
- 原稿を作って「読む」のではなく「話す」
- スライドはシンプルに、伝えたいことを絞る
プレゼンテーションも文章と同じで、「相手に何を伝えたいか」を先に決めることがすべての出発点です。
読んで実際に変わったこと
正直なところ、この本を読んで「まったく新しい文法知識」が手に入るわけではありません。書いてあることの多くは「言われてみれば当たり前」のことです。
でも、その「当たり前」を意識できるようになったことが大きかったと思います。
自分の場合、特に変わったのは2つです。
1つ目は、書く前に目的を考えるようになったこと。 以前は思いついたことをそのまま書き始めていましたが、この本を読んでからは「この文章で何を伝えたいのか」を先に考えるようになりました。結果的に、書き直しが減って効率も上がりました。
2つ目は、事実と意見を分ける意識が身についたこと。 レポートを書くとき、「ここは調べた事実」「ここは自分の考察」と区別して書くようになり、論理の流れが整理しやすくなりました。ブログでも、本の要約と自分の感想を分けて書くのはこの意識が元になっています。
この本の活かし方
『理科系の作文技術』の内容は、さまざまな場面で活かせます。
大学のレポート・論文
レポートの構成に迷ったら、「序論・本論・結論」の型と「1段落1トピック」のルールを思い出すだけで書きやすくなります。「何を言いたいのか」が先にあって、それを裏付ける事実を並べていく。この順番を守るだけで、伝わりやすい文章になります。
仕事の報告書・メール
「事実と意見を分ける」は、仕事の報告書でそのまま使えます。「何が起きたか(事実)」と「それをどう解釈するか(意見)」を分けて書くだけで、読み手が状況を正確に把握できるようになります。
日常のテキストコミュニケーション
チャットやSNSでも、一文を短くする・主語を明確にするだけで伝わりやすさが変わります。短い文章だからこそ、この本の原則が効きます。
まとめ
『理科系の作文技術』は、「正確に伝わる文章」の書き方を体系的に学べる1冊です。
特に「事実と意見を分ける」「書く前に目的を決める」「1段落1トピック」の3つは、一度身につければあらゆる文章で使えます。大学生に限らず、文章を書くすべての人におすすめできる本です。
合わせて読みたい
文章術に興味があれば、以下の本もおすすめです。
- 『人を操る禁断の文章力』(メンタリストDaiGo) — 「正確に伝える」ではなく「人の心に刺さる文章」を書きたいときに。書く内容の決め方から表現まで、マーケティング寄りの視点でまとまっています。
- 『沈黙のWEBライティング』 — Web上で読まれるメディアを作りたい人向け。マンガ形式で読みやすいです。
- 『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』 — 自分がブログを書き始めた頃に参考にした本。書きたい内容の整理から文章のフォーマットまでカバーしています。
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