理系院卒がベンチャーに新卒入社して気づいたこと

理系院卒がベンチャーに新卒入社して気づいたこと

5分で読める 大学生活
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理系の大学院を出てベンチャー企業に新卒就職する、という選択肢は周囲に前例が少なくて判断しにくいと思います。

自分は金沢大学の情報系大学院(ヒューマンインタフェース専攻)を修了後、東京のスタートアップに新卒エンジニアとして入社しました。入社から数年が経った今、院進すべきかどうか迷っている人やベンチャー就職を考えている院生に向けて、実際のところを正直に書いてみます。

なぜ大手ではなくベンチャーを選んだか

出発点は単純で、スタートアップの空気感に早い段階で触れてしまったことです。

大学3年生のとき、IVS(Infinity Ventures Summit)というスタートアップカンファレンスが金沢で開催される年と重なり、知り合いの紹介でボランティアスタッフをしました。同い年くらいの若い起業家が必死な顔でピッチしているのを見て、大変そうなのに楽しそう、という印象が強く残りました。それまで見てきた「プレゼン」とはまったく違う熱量でした。

それ以来、大企業に行く選択肢は自然と薄れていきました。

ただ、地方の大学にいると、そもそもベンチャーを志望する学生が少ないです。身近にインターンをしている友人がいなければ、インターンしようという発想すら生まれにくい。就職先の情報も、研究室のOBがいる企業や大学に推薦枠がある企業に偏りがちです。

自分の場合はIVSというきっかけがあったのでよかったですが、意識的に外部に出ていかないと視野が狭まりやすい環境だったと思っています。ベンチャーに興味があるなら、インターンやカンファレンスでとにかく空気感に触れてみることを勧めます。論理で判断するより、自分がその環境に居心地よくいられるかどうかの感覚が大切です。

大学院に行くべきだったか

学部のとき、就活で相談した社会人から「ベンチャーは実力主義だから学歴は関係ない。早く社会に出たほうが力がつく」というアドバイスをもらいました。迷っていたのでその言葉が刺さり、進学するかどうかかなり悩みました。

今になって振り返ると、あのアドバイスは半分正しくて半分はそうとも言えないと思っています。

たしかに、実務の中で経験を積むスピードには院生活は敵いません。学部で卒業した同期が先に社会に出てプロジェクトを任されているのを見て、焦りを感じたことも正直ありました。

ただ、研究活動で身につくものは実務とは違う種類のものです。具体的には以下のようなものを2年間で鍛えられたと思っています。

  • 仮説を立てて検証し、うまくいかなかったら改善するサイクルを回す習慣
  • 「その検証方法は本当に正しいか」と批判的に問い直す力
  • 自分のロジックに厳しい指摘が来ても、人格と論理を切り分けて議論できること
  • お金や評価でなく「知りたい・作りたい」というモチベーションで動ける経験

特に最後の点は、入社後に効いていると感じます。お金が直接かかっていない状況で自律的に動き続けた経験は、仕事でのモチベーション管理に意外とつながっています。

加えて、自分の場合は大学院での国際的な経験が会社選びに直結しました。SIGGRAPH ASIAという国際学会のスタッフとして参加したとき、海外の研究者たちが目を輝かせながら自分の研究や将来について語る姿に強い刺激を受けました。中国の深センへ行ったときも、書店のフロアが分厚い専門書を読む人で埋め尽くされていた光景が忘れられません。

こうした経験が積み重なって、すでに海外展開しているベンチャーに就職したいという軸ができました。おそらく学部で卒業していたら、この軸は生まれなかったと思います。

「大学院に行くべきか」という問いへの自分の答えは、「ちゃんと研究に向き合うなら、行く価値は十分ある」です。ただし「大学院生は自由な時間が多い」というのは半分誤解で、研究活動は思った以上に大変です。緩く過ごして2年間を消費するくらいなら、早く社会に出るほうがよいかもしれません。

実際にベンチャーに入ってみてどうか

入社前は「ソフトウェアを作る」「機能を追加する」という作業をわりと単純に考えていました。実際に入ってみると、思っていた以上にやることが多かったです。

コードを書くだけでなく、要件をディレクターとすり合わせたり、スケジュールを引いて進捗を管理したり、一度作ったら終わりではなく動き続けるものを維持する責任があります。大学院での研究は基本的に一人でやっていて、実験のときだけ動けばよかったので、この違いはかなり大きかったです。

「実際に使うユーザーがいる中で、すべてを含めたものづくりをする」という責任の重さは、入社してはじめてわかりました。

苦労して作った機能がリリースできたときの達成感、知識が積み上がって以前は解けなかった問題が解けるようになる感覚、自分が関わったプロダクトを実際に使ってもらえるやりがい。こういった手触りは、ベンチャーの環境ならではのスピードで経験できると感じています。

一方で、ベンチャーでは当然ながら未整備な部分も多いです。仕組みがなければ自分で作る必要があるし、手本になる先輩が少ない場合もある。安定した環境で着実にキャリアを積みたいなら大手のほうが向いているケースもあります。

院卒でベンチャーを検討している人へ

自分の経験から言えることをまとめると、以下の3点です。

院進するかどうか迷っているなら、研究にしっかり向き合える環境と意欲があるなら進学する価値はあります。ただし「とりあえず院に行く」では時間がもったいないです。

ベンチャーかどうか迷っているなら、まずインターンやイベントで空気感を体感してください。論理で判断するより、その環境に居心地よくいられるかどうかの感覚のほうが信頼できます。

地方の大学にいるなら、意識的に外部に出ていかないと選択肢が狭まります。東京のベンチャーも最近はリモートインターンを受け入れているところが増えているので、場所に縛られず動いてみることをお勧めします。

選択肢は自分で広げに行くものだと、社会に出てから改めて感じています。

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