【速報】サハラマラソン2025完走レポート|エンジニアが7日間で250kmを走破した記録

【速報】サハラマラソン2025完走レポート|エンジニアが7日間で250kmを走破した記録

16分で読める カルチャー
この記事はnoteに掲載した記事を加筆修正したものです。 元記事をnoteで読む ↗

はじめに

2025年4月に「世界一過酷」と言われる「サハラマラソン」、Marathon des Sables THE LEGENDARYに出場し完走しました。
ちょうど大会1年前の2024年4月に挑戦を決めてから1年かけて準備し、レース未経験からの挑戦でした。

アフリカ大陸、サハラ砂漠砂漠、テントを移動しながらの250kmという距離。すべてが初めてだらけの環境において過ごした7日間は、これまでに生きてきた28年間の人生の中で、最も濃い7日間でした。

自分はソフトウェアエンジニアとして働いています。ときに「サイコパス」を疑われるほど日常においてはほとんど感情が表に出ることがなくて、今回のサハラマラソンの期間中は何度も感動で涙を流しました。

とある性格診断では感情や情緒の表現が欠落しています

レースの結果としては847名/896名(完走/出走)の中で、全体総合558位、男性474位、年代別136位──数字だけ見れば平凡な結果でしたが、それでも51時間09分45秒で完走したという事実は、自分が「走りたい」と思って準備し出場したレースで多くの人の応援をいただきながら走破できたというかけがえのないものになりました。

レース期間中のできごとはもちろん、それまでの準備期間の体験も含めて、帰国して少し経ったいままだいろいろな考えや感情が沸き起こっていて整理しきれていません。
それらはまたおいおい記事にしていきたいと思いますが、取り急ぎ7日間がどのようなものであったかを紹介できればと思い速報的に文章を書こうと思います。

サハラマラソンとは? “世界一過酷なレース”

Marathon des Sables THE LEGENDARY(通称:サハラマラソン」)は、7日間で250kmを走るレースです。
モロッコのサハラ砂漠を舞台に6つのステージに分けて約250kmを走破する究極の耐久レースです。

参加者は全ての装備と食料を背負って走り、レース中は水のみが主催者から支給されます。 コース上に設置されたチェックポイントを頼りに、灼熱の砂漠を走ります。

7日間寝泊まりするベルベル式のテント

なぜサハラマラソンに挑戦したか、どう準備したか

自分がサハラマラソンに挑戦した理由については、クラウドファウンディング実施時に書いたものがありますので、概要を残しておきます。

動機とテーマ

少年のころとは少し変わって外向きになれた大学時代。
とあるきっかけで出会った人から「人生には2つの生き方がある」と教わりました。夢に向かって突き進む人生と、夢にも思わなかった人生。「夢にも思わなかった人生」を生きるためには、人との出会いを大事にし、次に活かしていく必要がある。

こう教えてもらって以来、それを意識して過ごしていた2023年の夏。
スペインのトマト祭りで出会ったのがサハラマラソンの経験者、そしてサハラマラソンでした。

「一度きりの人生で、せっかくこの地球で生まれたのだから、サハラを走る人生とそうでない人生のどちらが良い?」
出会いの中でそう自問自答した結果、自分の答えは「サハラを走る人生」でした。

「でも、お金の準備や体力づくりが心配」「3年後くらいに挑戦しよう」と考えていたところ「今できることを後回しにしたらだめだ。人生に『いつか』という保証はない」と経験者の先輩から言われました。

しかし、自分はほとんど未経験。そこからの世界一過酷なレースへの挑戦です。「無謀」であり「バカ」とも思われるが、それでもできるかもしれない。
そう思い、この取り組みを「サハラサバカ」という名前をつけ、準備の様子やレース中の様子を記録していきました。

トレーニング

そこから練習を始めます。ひとつの大会でなにかサハラにつながる学びを得るべく、さまざまなレースに出場しました。

装備品

食料と装備品の準備が一番大変でした。何をどう選んだかはまた記事できそうですが、取り急ぎ写真だけ置いておきます。
自分の場合、ハンガーノックやカロリー不足を過度に心配しすぎて重くなりすぎました。

あとは砂漠の中ではテント内も散らかっていたり、風も強くどんどんモノがなくなっていくので、大切なものや替えが効かないものは予備を持っていくことをおすすめします。

それから、食事やスポーツドリンクは事前にすべて同じ状況で同じものを食べておくのが理想です。(自分もわかってはいたのですが時間的に全部は試せませんでした)

サハラマラソン2025ダイジェスト

自分のサハラマラソン2025のダイジェストは以下のようになっています。

Day 1|31km|6時間16分12秒|689位
ようやくたどり着いたサハラの感動から、オーバーペース気味に。
荷物の持ちすぎによる負荷も加わり、初日から肩と足に負担が蓄積してしまいました。


Day 2|41km|9時間24分22秒|746位
胃腸トラブルが発生し、下痢とともに脱水気味に。
最初こそランできたが、ほとんど歩き続けになった2日目。

テントとチェックポイントにはこのようなトイレが準備されています。近くにあるビニール袋をはめて、事後はゴミ箱に捨てました。トイレットペーパーは持ち込みです。


Day 3|31km|6時間31分41秒|533位
戦略変更。「走る」を捨てて、一定ペースのパワーウォークで動き続けた。

砂が多くアップダウンが多いコース


Day 4|85km|17時間25分12秒|476位
今回のレースのピーク。砂嵐と雨嵐にも負けず、16時間にわたって歩き続けたオーバーナイトステージ。

日の出よりも前に出発。


Day 5|43km|7時間54分55秒|575位
マラソンステージ。足がつるなど、疲労はピークに達していた。

足のマメなどは、テント地にクリニックがあり注射器と赤チンをもらえます。処置は自分でするスタイルです。


Day 6|21km|3時間37分23秒|586位
サハラ最後の20km。「終わってしまう」思いを噛み締めながらのフィニッシュ。

戦略チェンジ:3日目以降は”歩き続ける”

サハラマラソン開始初日から胃腸トラブルが発生し、ペースを維持できなくなりました。食べ物飲み物、そして環境。思い浮かぶ要因がありすぎて原因はわかりませんでしたが、走ることがしんどくなりました。
トイレがない環境での多数の排泄に加えて、暑さも重なって脱水状態になりました。
更には今回のコースは砂地も多かったため、走るというよりもトレッキングポールを使いながら歩いたほうが楽な箇所も多くあったため、3日目からは 「平均時速6kmでパワーウォーク」 に切り替えました。

以下を徹底しました:

  • 一定速度のキープ:装備品として持っていったSUUNTOの時計の速度計を使いながらペースを一定に維持しました。

  • トレッキングポールによる負荷軽減:トレッキングポールを活用して全身の力を使って歩くことで、足の疲労を軽減しました。

  • 休憩最小化:補給等は移動中に行い、チェックポイントでの停止時間を最小限にしました。

時計を見ながらずっと一定速度を維持して進みます

この結果、これ以降は順位は大崩れせず、むしろ粘りが功を奏しました。

嵐が来ても歩き続ける ― Stage4 82.5 km

Stage 4は「オーバーナイトステージ」とも呼ばれるロングステージでした。2025年4月9-10日に実施され、9日の6時に1ST GROUPが出発したあと、2日目である4月10日の16時、34時間の制限時間内で82.5kmを進むステージです。
サハラマラソンのリタイアの多くはここで起きるという一番のコースです。

前日同様に走るではなくて歩く戦略を取り続け、無心でひたすらに進み続けました。暑い時間帯に休憩する人もいましたが、自分は止まらず歩き続けました。
日没である20時ごろには60kmを超えていたのですが、そのあたりから強風が吹き始め、砂嵐が巻き起こりました。

足元を見ると水滴が

それに加えて、この日は砂嵐に混じって雨もふり始めました。サハラマラソンで雨が降るのは11年ぶりだという話をあとで聞きました。

まさか砂漠で雨が降るとは思っていなかったので対策はそこまでしていませんでした。
視界は非常に悪く、「ヘッドライトの光が切れたら、道は闇だけ」――そう思いながら、目を凝らしながらかすかに見える指標の反射板をひたすら追い続けました。

休む選択肢もあったのですが「ここまで来たからには気合と根性」と、ひどくなる前にゴールしようとむしろペースアップしたのですが、その影響で足に負担がかかり、ゴールまで残り3kmになってからは歩くのもやっとな状況でした。

それでも足を一歩一歩出し続け、ゴールしたときにボランティアスタッフに言われた言葉

“You did it !”

これを耳にしたときに、それまでの16時間の歩き続けた苦しさがひとつにまとまり、涙が出てきました。

こんなに感動したの、何年ぶりだろうかでさすがに涙しました。

完走を支えたおすすめギア TOP5

レースの装備品については以下にもまとめていますが、その中で特に良かったものをピックアップしようかと思います。ページについては出走前のものなので、再度更新もかけていく予定です。

SEA TO SUMMIT エアロウルトラライトピロー(レギュラー) ST81025

とてもコンパクトな上に、寝心地も抜群な枕でした。耳栓、アイマスクに加えてこれのおかげで睡眠トラブルがなかったと思っています。

SUUNTO VERTICAL

サハラマラソン参加にあたって、支援品として提供いただきました。3日目から一定ペースを維持する上で速度が見えることが必須でした。ソーラー充電ができ7日間充電無しで動き続け、砂塵や雨でも壊れることなく重宝しました。

**SALOMON Trail Blazer Belt
**メインのリュックと別でサブのポーチを持っていったのですがこれが役立ちました。カメラやスマホ、またサングラスやライトなど、砂漠ではものがすぐに飛んでいったり紛失も多かったので身につけておける入れ物としてサイズもぴったりで重宝しました。背面に回すと、リュックの重さが乗ってこのポーチのベルトで重さを骨盤で支える、という使い方もできました。

インスタント味噌汁

砂漠で食べたり飲んだりしたもので一番美味しかったもの、自分は味噌汁でした。レース後に水で溶かして飲んでもとても美味しかったです。

コンソメキューブ

今回運営からの必須携行品で指定されていたものです。塩タブレットなどのほうが良いのではないか?と日本人の間では不評だったので自分は最低限の14個しか持っていかなかったのですが、行ってみて評価が大逆転しました。塩分をとても美味しく補給でき、浸透していく感じがあります。さらには少し舐めてみて塩味をどう感じるかで塩分濃度を測る指標としても使えました。

学び ― “サハラの走り方は参加者の数だけある”

この旅で痛感したのは、「サハラの走り方は参加者の数だけある」ということでした。

参加する前も当然、「サハラの走り方」に正解や絶対解というものがあるとは思っていませんでした。
他の人のアドバイスは参考にしながらも、年齢や体力がばらばらなので自分に合う走り方を実際に試しながら見つけるのが大事であることは参加を決めた段階で思っていました。

しかし、実際にやってみたことで、自分が見えていた「サハラの走り方」の幅が狭かったことを痛感しました。

参加者の間で練習量、年齢、体力などは違うのはもちろんですが、スポーツを通じて骨格や体質など、人によって自分が思っている異常に差分が大きく出ることを知りました。
食事にしても、同じものを食べても美味しいと思うポイントが全然違ったり、糖質からエネルギーを取りやすい、脂質からエネルギーを取りやすい、などは体質だけではなくて状況によっても変わってきます。
また、美味しさを求めるのか軽さを求めるのかなど、同じ人間、そして日本人の中でも大きく違うことを知りました。

そしてレースに参加すると、他の参加者の人とも濃い交流の機会があります。「なぜサハラに来たのか?」などの話をしたり、エピソードを聞く中で身体的な「サハラの走り方」以外にその人の気持ちが入った「サハラの走り方」があると感じました。

この感覚はまだ自分の中で落とし込めていないのでもう少し深ぼってまたまとめたいと思っていますが、最初に感じたのはオーバーナイトの日でした。

この日、上位の選手は自分たち一般の選手よりも遅れてスタートします。自分がヒィヒィ言いながらようやくトレッキングポールを使って登っていた砂丘を、1位の選手が素手で何も持たずに颯爽と掛けて行く様子や、そのレースに対しての真剣さを見たとき。この人たちが目指すものや見ている景色は自分とは明らかに違うことを間近で感じました。

また、逆もしかりで、けがをして自分の走りができなかったり、体力的に厳しくてずっと歩き続け、カラダは限界を迎えていてもサハラへの気持ちだけで長時間進み続けてゴールした参加者を見たとき。この人たちがサハラにかけるものや、感じたことと自分が感じていたことも、きっと違うのだろうと思いました。

順位の上では両者は1つの軸で並べられてしまいますが、自分にはどちらの走り方が「正しい」とか「優れている」とはいえないのではないか、とそう思いました。

最後に

こうして、無事にサハラマラソンを完走することができました。書ききれていない話や感情もたくさんあるので、またおいおい整理しながら発信できればと思います。

この1年という長いプロジェクト期間、本当に多くの人の支援をいただきました。本当にありがとうございました。おかげさまで、最高の経験をさせていただきました。
本当に感謝しています。

一緒に7日間を乗り切ったテントメイト、同じ思いを経験した今年の参加者、そして事前にアドバイスをくれた過去参加者のみなさん、日本で実況してくれたサンドネのみなさんや、日本で状況を確認してくれたみなさん。心配しながらも送り出してくれた家族、忙しい年度初めの不在を許してくれた職場のみなさん。クラウドファウンディング支援者のみなさん、後援していただいた個人、団体の方々…もう書ききれないほど沢山の人から応援をもらいました。

そして、ここまで目を通していただき、ありがとうございました。

もし読んでくれている方がサハラマラソンに興味があったり、参加を迷っている人がいるのであれば参加を強くおすすめします。

まだ走り切ったばかりで自分の「サハラを走った人生」はこれからが本番になりそうですが、間違いなく素晴らしい思い出になったと確信しています。

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