
理系大学生が完全歩合の携帯営業インターンで1件も売れなかった話——それでも掴んだ営業の本質
インターンシップには大きく2種類あります。数日〜数週間で職場を見学・体験する「就業体験型」と、実際に報酬をもらいながら社員と同じように働く「長期インターン」です。前者は雰囲気をつかむには向いていますが、成果を求められる緊張感はほとんどありません。自分が選んだのは後者でした。
理系の学部生でしたが、選んだのはプログラミングではなく営業でした。きっかけは、あるイベントでその仕事をしている人と少し話したことです。「稼ぎたい」という気持ちと、「この人すごいな」という憧れがあって、面白そうだから飛び込んでみた、というのが正直なところです。深い戦略があったわけではありません。ただ「学生のうちに、自分の力でお金を稼ぐとはどういうことかを一度知っておきたい」という気持ちだけは、はっきりありました。
何をしていたか
仕事は、個人向けに大手キャリアの携帯電話を売る販売代理店での営業でした。報酬は完全歩合制で、売り上げに応じて入る仕組みです。つまり、売れなければ一円にもなりません。稼働は週1〜2回ほど。学業と並行しながら、空いた時間に現場へ通っていました。
結果は、1件も売れなかった
先に結論を書くと、自分はこのインターンで1件も成約できませんでした。完全歩合なので、報酬はゼロです。数値目標も一応は設定していましたが、正直なところ最後まで身が入りませんでした。売れない時間が続くと、自分が何のためにそこにいるのかが分からなくなってきます。
学生が外で見知らぬ人に声をかけて何かを売ろうとすると、たいてい警戒した目で見られます。話を聞いてもらう前に断られることも多く、相手が早く会話を終わらせたがっているのが伝わってくる場面も何度もありました。その壁を越えて契約まで持っていくことが、自分にはどうしてもできませんでした。断られ続けると気持ちはすり減りますし、数字が動かないと「次はこう変えてみよう」という工夫すら湧いてこなくなる——その悪循環も、身をもって知りました。
環境との相性も良くありませんでした。職場の空気にうまく馴染めず、周りの人とも打ち解けられないまま終わってしまいました。「自分にはこの仕事は合わないかもしれない」と、働きながら何度も感じました。きれいな成功体験として語れる経験ではありません。
それでも得たもの
ただ、売れなかったからこそ分かったこともあります。
ひとつは、「売る」「お金を稼ぐ」とはどういうことか、その重さを体で知ったことです。学生のうちは、お金は親やバイト先から半ば自動的に入ってくるものでした。けれど営業は、自分が動いて誰かに価値を届けない限り、一円も生まれません。稼ぐことのシビアさを、報酬ゼロという結果でこれ以上なく思い知りました。それまでは漠然と「働けばお金はもらえる」と思っていましたが、相手に価値を届けられなければ対価は発生しない、というごく当たり前のことを、初めて自分ごととして理解しました。
もうひとつは、営業の本質が「売り込み」ではなく「お役立ち」だという感覚です。最初は「ものを売る仕事」だと思っていましたが、うまくいっている人ほど、相手の話をよく聞いていました。相手の状況や困りごとを質問で引き出し、それに対して自分の商材が役立つなら提案する。役に立たないなら無理に売らない。いわゆる質問型の営業です。これは売れなかった自分が、売れる人との差として一番強く感じた部分でした。自分はつい商品の説明を先に並べてしまっていましたが、本来は逆で、相手に質問を重ねて困りごとを一緒に見つけるところから始まるのだと思います。順番が違うと、どれだけ丁寧に説明しても相手の心は動かない。売れなかった経験を逆算して、ようやくその理屈が腑に落ちました。
商材の知識が思った以上に大事だ、ということも痛感しました。相手の疑問にその場で答えられないと、信頼してもらえません。準備不足のまま現場に立っても、ただ時間が過ぎていくだけでした。
合わなくても、やった意味はあった
長期インターンには怖い部分があります。知らない環境、知らない仕事、そして成果を求められる緊張感。自分のように、結局うまくいかないこともあります。
それでも、やってみた意味はあったと思っています。学生は社員ではないので、合わなければ辞めればいい。方向転換のコストが低いのです。合えば大きな収穫になりますし、合わなくても「自分にはこれは合わない」という判断材料が手に入ります。就業体験型の、成果を問われない見学では得られない種類の情報です。
理系だからエンジニア系を選ばなければいけない、ということもありません。畑違いの営業に飛び込んだ自分は1件も売れませんでしたが、それでも「稼ぐとは何か」「人に動いてもらうとはどういうことか」を、机の上では絶対に学べない形で持ち帰れました。迷っているなら、合わない可能性も込みで、一度試してみる価値はあると思います。
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