『モモ』(ミヒャエル・エンデ)はどんな話?あらすじと、大人が読んで刺さったテーマ

『モモ』(ミヒャエル・エンデ)はどんな話?あらすじと、大人が読んで刺さったテーマ

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ミヒャエル・エンデの『モモ』は、ひとことで言えば「時間どろぼうに時間を奪われた街と、それを取り戻す少女の物語」です。1973年に書かれた児童文学ですが、効率や生産性に追われがちな今の大人が読むほうが刺さる本だと思います。自分は大学4年生のときに読んで、まさにそうでした。

あらすじ:『モモ』はどんな話か

舞台は、いつの時代とも分からないある街のはずれ。円形劇場の跡に、モモという身寄りのない女の子が住み着いていました。モモには特別な才能があります。人の話をただじっと聞くだけで、相手は頭の中が整理され、元気を取り戻していくのです。そのおかげでモモのまわりには、道路掃除人のベッポや、ほら吹きの観光ガイド・ジジをはじめ、いつも誰かが集まっていました。

ところがある日、「時間貯蓄銀行」を名乗る灰色の男たちが街に現れます。彼らは人々に「時間を無駄にせず節約して銀行に預ければ、利子がついて増える」と説いて回ります。床屋も、子を持つ母親も、子どもたちまでも、その言葉を信じて暮らしから「無駄」を削り、ひたすら効率よく働きはじめます。けれど、節約したはずの時間で人々はかえって心の余裕を失い、街からは笑い声や何気ない会話が消えていきました。預けた時間は、灰色の男たち——つまり時間どろぼうに盗まれていたのです。

その正体に気づいたモモは、時間を司るマイスター・ホラと、ゆっくり歩く亀のカシオペイアの力を借りて、盗まれた時間を人々に取り戻すために立ち向かっていきます。

「時間を節約すれば幸せになれるのか」という問い

大学4年生のとき、自分は残り少ない学生生活の使い方ばかり考えていました。「限られた時間なんだから、意味のあることだけに使わなければ」と思い込み、友人とだらだら過ごす時間や、意味がないと決めつけた遊びを進んで削っていました。

『モモ』を読んで、時間を節約している街の大人たちと自分がそっくりだと気づきました。無駄を減らしてひたすら前に進んでいるのに、空いたところには次の予定が入り、結局いつも時間が足りない。効率を追えば追うほど、何か大事なものがこぼれ落ちていく感覚です。作中で時間どろぼうに時間を預けた人たちが、豊かになるどころかどんどん追い詰められていく姿は、笑えないほどリアルでした。

読み終えて感じたのは、「世の中の基準で無駄かどうかを判断しているうちは、自分の時間を生きていない」ということです。誰かに決められた効率の物差しではなく、「これは本当に自分にとって無駄なのか」と問い直すと、同じ時間の見え方が変わってきます。

心に残った「時間とは生きるということ」

物語の中で、時間を司るマイスター・ホラがモモに語る言葉があります。時間とはすなわち生きるということであり、その時間は一人ひとりの心の中にある、という考え方です。読んだ当時はうまく飲み込めませんでしたが、社会人になって予定に追われるほど、その意味がじわじわと分かってきました。

カレンダーを効率よく埋めることと、時間を豊かに生きることは、まったく別のことだと思います。予定を詰め込んで「充実している」と思い込んでいるとき、自分はたいてい目の前の相手の話をちゃんと聞けていません。モモが何もせずただ話を聞くだけで人を元気にできたのは、彼女が時間を「こなす」のではなく、相手とともに「過ごして」いたからなのだと感じました。

効率の名のもとに削った「無駄」の中にこそ、本当はいちばん大事なものが含まれていたのかもしれない——読み終えて、そんなことを考えました。

大人が読む意味

「児童文学」と聞くと子ども向けの軽い読み物を想像するかもしれませんが、この本が投げかけるテーマはまったく軽くありません。「時間とは何か」「効率化された生活で失われるものは何か」という問いが、物語の形を借りて静かに突きつけられます。むしろ、仕事や予定に追われる経験を重ねた大人のほうが、灰色の男たちの言葉の不気味さを実感として受け取れるはずです。

時間に追われている感覚がある人、毎日なんとなく焦っている人にこそ、一度読んでみてほしい一冊です。物語としても素直に面白く、ファンタジーとしての読みごたえも十分あるので、児童書だからと身構える必要はまったくありません。

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