
大学生がスタートアップを手伝って得た4つの学び——EC事業立ち上げの実体験
大学3年のとき、知り合いの先輩が起業するということで一緒に働くメンバーを探していました。当時はすでに別のインターンシップをしていましたが、「この経験はなかなか得られない」と感じてインターンをやめ、先輩を含めた4人でEC事業を始めることにしました。
事業の内容は商品の仕入れ、デザインとパッケージの作成、ECサイトの構築、そして販売です。大企業のインターンとは違い、仕組みも役割も最初は何もない状態からのスタートでした。
「何もない状態からのスタート」というのは、聞こえはよくても実際には相当しんどいものです。会議室も備品も研修プログラムも用意されておらず、「まず何が必要かを決めること」からすべてが始まります。ミーティングひとつとっても、集まる場所、アジェンダの立て方、役割の分担——誰かが決めなければ何も動かない。この環境に最初は戸惑いましたが、それが逆に主体性を鍛えてくれました。
この経験から得たものは思っていた以上に大きく、特に印象に残った4つの学びを書き残しておきます。
1. 生産者の視点
それまでの自分は学生として、ものを「消費する」側にしかいませんでした。買う、食べる、使う——それだけです。
EC事業では商品を自分たちでつくる側に回りました。何を伝えるか、どんな価値を提供できるか、どうすれば手に取ってもらえるか。商品ページひとつ作るにも試行錯誤の連続です。
この過程で気づいたのは、身の回りのものはすべて誰かが作っているという当たり前のことでした。普段使っているもの、食べ物、お店——すべてに作り手の意図が込められている。消費者のときには見えなかった「裏側」が見えるようになりました。これは自分にとって、ものの見方そのものが増えた瞬間だったと思います。

学ぶことの本質 — 「ものの見方」が増えると世界が変わる
なぜ勉強するのか。「意味がわからない」「必要なことだけ学べばいい」——そんな悩みに対して、自分なりにたどり着いた答えは「ものの見方を増やすため」でした。
商品ページひとつでも、「文章で伝えるか、写真で見せるか」「どんなキャッチコピーが刺さるか」という判断が連続します。売れなければフィードバックはゼロではなく、「誰にも刺さらなかった」というサインです。この感覚は、レポートを提出して採点される学業とは性質が違いました。正解のない問いに対して、自分で仮説を立てて試す経験を積めたのは、生産者側に回ったからこそだと感じています。
2. 働くことへのイメージの変化
起業を手伝う前、「働く」ことにあまりいいイメージを持っていませんでした。満員電車でぎゅうぎゅうになっている大人や、居酒屋で愚痴をこぼしている姿しか見たことがなかったからです。
でも、自分の意見が商品のデザインに反映されたり、自分が作ったWebページを通じて実際に商品が売れたりする体験は、純粋に楽しいものでした。「誰かの役に立っている」と実感できることが、働くことの楽しさの正体なのだと気づきました。
最初はみんなで話していたアイデアが、実際の商品として形になっていく過程も面白かったです。ゼロからイチを作る体験は、大企業のインターンシップではなかなか得られないものだと感じています。
3. お金の流れの体感
理系の学生だったこともあり、自分の専門以外の知識はほとんどありませんでした。特にお金まわりの話は、漠然としかイメージできていなかった部分です。
EC事業では、材料費・パッケージ代・送料・人件費といった原価構造を実際に扱い、価格を決める経験をしました。「なぜこの商品はこの値段なのか」が体感で分かるようになったのは大きかったです。
教科書で学ぶのと、自分たちのお金がかかった状態で意思決定するのでは、理解の深さがまったく違います。
4. 給料に応える意識
この起業で、時給制以外の報酬を初めてもらいました。大きな額ではありませんでしたが、毎月定額です。
定額でもらうようになってから、「今月はこの額に見合う貢献ができただろうか」と自然に考えるようになりました。そして「もらった以上の貢献をしよう」と意識するようになった。
これは時給で働いていたときには生まれなかった感覚です。時給は「時間を売っている」意識になりやすいですが、定額報酬は「成果で返す」意識に変わる。この違いを学生のうちに体感できたのは、その後のキャリアにとっても大きかったと思います。
また、報酬が定額になると「どの時間に何をするか」を自分で考えなければいけません。時給制のアルバイトでは「シフトを入れた時間に言われたことをこなす」という構造ですが、定額報酬では自分で課題を見つけ、優先順位をつけて動く必要があります。誰かにタスクをもらうのを待つのではなく、「今何が一番必要か」を考える習慣が、この経験で身についた気がします。
スタートアップで動くことの本質
4つの学びを振り返ると、共通しているのは「自分が主語になる経験」だと思います。消費者から生産者へ、「やらされる仕事」から「やりたい仕事」へ、「時間を売る」から「成果で返す」へ。どれも自分が前に出ることで初めて得られる感覚です。
大企業のインターンが悪いわけではありません。整った環境で体系的に学べることは確かにあります。ただ、「何もない場所で動く経験」は、整った環境では積みにくい。学生のうちにゼロから何かを作る場に身を置けたことは、社会人になってからも何度も役に立っていると感じます。
「大企業インターンかスタートアップか」という問いに正解はないと思います。ただ、整った環境では経験しにくいことが、まだ何もない場所には確かにあります。自分がこの4つの学びを得られたのも、何もないところから始めたからこそだと感じています。
大学時代の選択がその後にどうつながったかについては、大学を出て思うことにも書いています。
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